コラム
Column心理的安全性を高める最新アプローチ「インクルーシブリーダーシップ」ってなに?
「心理的安全性」というバズワード
いま、「心理的安全性」がビジネスの現場でバズワードとなっています。心理的安全性とは、「組織内でメンバーがミスや意見の対立を恐れず、自由に発言や行動ができる状態=人間関係」を指します。これが確保されているチームでは、メンバーが積極的にアイデアを出し、問題に取り組むことができ、結果的にチーム全体のパフォーマンスが向上します。
心理的安全性という言葉が世の中で広まる一方で、多くのリーダーが「部下がついてきてくれない」「どうすればチームをうまく統率できるのか」と悩んでいます。統率力を発揮しようとしているつもりでも、部下が積極的に動かない、あるいはリーダーの意図がうまく伝わらないことが多いのです。その原因の一つとして、チーム内で心理的安全性が確保されていないことが考えられます。
ここで「インクルーシブ・リーダーシップ」(inclusive leadership )が重要な役割を果たします。インクルーシブ・リーダーシップは、心理的安全性を高め、メンバーが自発的にリーダーシップを発揮できる環境を作るためのリーダーシップスタイルです。
近年の研究(Carmeliほか2010)では、インクルーシブ・リーダーシップは心理的安全性と正の相関があり、従業員の創造的な仕事への参画を促す効果が期待できるという研究結果が示されています。
このコラムでは、インクルーシブ・リーダーシップの概念とその実践方法、心理的安全性を高めるためのポイントについて解説します。
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Carmeli, A., Reiter-Palmon, R., & Ziv, E. (2010). Inclusive leadership and employee involvement in creative tasks in the workplace: The mediating role of psychological safety. Creativity Research Journal, 22(3), 250-260.
シェアド・リーダーシップ、サーバントリーダーシップとの共通点
インクルーシブ・リーダーシップは、「すべてのチームメンバーが敬意を持って公平に扱われていると感じられるようなリーダーシップ」(Bourke & Espedido, 2019)と定義されます。
従来のようにリーダーが一方的に指示を出し、メンバーがそれに従うのではなく、各メンバーが自分の意見を持ち、責任を持って行動できる環境を作ることに焦点を当てています。この観点は、以前のコラムで紹介した「シェアド・リーダーシップ」と重なります。
「インクルーシブ」という言葉は、「包括」や「包摂」を意味します。メンバー全員が排除されず、仲間外れにされないことに関心が向けられます。そのため、多様なメンバーの意見や背景を尊重し、全員が組織の成果に貢献できる環境を整えることが、インクルーシブ・リーダーの重要な役割となりなり。フォロワーに関心を持ち、フォロワーに対して働きかけることに力点を置くという点では、これも以前のコラムで紹介した「サーバントリーダーシップ」とも重なります。
Bourke, J., & Espedido, A. (2019). Why inclusive leaders are good for organizations, and how to become one. Harvard Business Review, 29(03), 2019.
このように、最近のリーダーシップのトレンドは、単なる指示や統制ではなく、個々のメンバーの意見を尊重し、参加を促進することに重きを置く方向へシフトしていることがわかります。
インクルーシブ・リーダーシップやシェアド・リーダーシップ、さらにはサーバントリーダーシップのように、リーダーはチーム全体の力を引き出し、多様なバックグラウンドを持つメンバーを公平に扱うことが求められています。
多様性と心理的安全性を重視したリーダーシップが注目されていることからも、現代のリーダーは、変革の担い手として全員が貢献できる環境作りに力を注ぐことを軽視できないと言えます。
インクルーシブ・リーダーシップの効果
インクルーシブ・リーダーシップを実践することで、組織に多くのメリットが生まれます。従来のリーダーシップでは、優れたリーダーが指示を出し、メンバーがそれに従うだけの構図になりがちです。しかし、これではメンバーが「指示待ち」の姿勢を取り、組織全体の成長が阻害されることもあります。
インクルーシブ・リーダーシップでは、メンバー一人ひとりが自分の意見を尊重されていると感じ、自信を持ってリーダーシップを発揮することが奨励されます。このような環境では、メンバーは積極的に組織の目標に貢献しようとし、結果としてチーム全体のパフォーマンスが向上します。
さらに、インクルーシブ・リーダーシップを実践するチームは、質の高い意思決定が行われ、協力的に行動できる可能性が高くなります。ある調査(出典)では、インクルーシブ・リーダーを持つチームは、パフォーマンスが高いと感じる割合が17%高く、質の高い意思決定を行っていると感じる割合が20%高くなると報告されています。
心理的安全性を高めるためにリーダーができること
リーダーとして心理的安全性を高め、チームを効果的に導くためには、いくつかの具体的な行動が必要です。
まず、メンバーの意見やアイデアに真摯に耳を傾けること。批判的な態度を避け、意見を受け入れる姿勢を示すことで、メンバーは安心して発言できるようになります。
また、リーダー自身が失敗やミスを認めることも重要です。リーダーが完璧でないことを認めることで、メンバーも自分のミスを恐れずにチャレンジすることができます。これにより、チーム全体が成長志向を持ち、創造的な解決策を見つけやすくなります。
さらに、メンバー同士の信頼関係を築くための時間を作ることも有効です。オープンなコミュニケーションを促進し、メンバーが互いに支え合う文化を育てることで、心理的安全性が強化されます。
まとめ
心理的安全性を高めることは、現代のビジネス環境で成功するために欠かない観点です。そのための鍵となるのが今回紹介した「インクルーシブ・リーダーシップ」です。
リーダーとして、メンバーが安心して意見を言える環境を整え、多様性を尊重する姿勢を示すことで、チーム全体が自発的にリーダーシップを発揮し、組織を成功へと導くことができます。
心理的安全性を高め、インクルーシブ・リーダーシップを実践することで、あなたのチームはより強く、結束力のあるものとなり、部下が自然とついてくるリーダーとなるでしょう。
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