前回のコラムでは、感情がいとも簡単に伝染してしまうことについてお話いたしました。仕事をしていく上で人とのかかわり合いは避けることができません、それゆえに、私たちは日常的にもっともっと自分の感情に意識を向ける必要があることが理解できます。
 
自分の感情に意識を向ける、それは「感情のメーターを見る」とも言えるでしょう。感情のメーターは、その人が意識した瞬間から機能する非常に優れたセンサーです。これが機能することで、自分自身の思考や行動に、感情がどのような影響を与えているのかが理解できるようになります。
 
私たちは強く意識しない限り、普段の生活の中で自分の感情にフォーカスすることはありません。感情に意識を集中してみると、それまでわからなかった自分の心の揺れ動き、それが生み出す影響(表情・行動)に気がつくことができます。こうして、いままでわからなかった自分の無意識を意識する(自覚する、理解する)ことができるようになってきます。
 
この感情のメーターを使い続けていると、ある時を境にして、他者が持つ感情のメーターの動きも意識できるようになります。そうなると、コミュニケーションの形は大きく変化します。なぜなら、それに気づいた瞬間から、相互の感情に働きかける、より深いコミュニケーションが可能になるからです。
 
感情のメーター

感情のメーターを装着しよう

 
このように、自分の感情のメーターを意識し始めることによって(装着することによって)「感情の利用」ができるようになります。
 
「感情の利用」とはどういうことでしょうか。それを説明するために、まず、ある考えやふるまいというアウトプットを出していくために「望ましい感情」があるということをお話したいと思います。
 
感情と思考の関係を長年研究してきた心理学者は、ある特定のふるまいを行うためには、それに対する「望ましい感情」があることを発見しました。それによると、肯定的な感情(嬉しさ・楽しさ・面白さなど)は、新しいアイデアを生み出したり、可能性を追求したりする際にふさわしい感情となります。
 
肯定的な感情は、その人の視野を広げ、新しいことにチャレンジしたり、困難を乗り越えたりする際の大きな原動力となるからです。新製品開発に向けたディスカッションを行う、組織の新たなビジョンを構築するといった「発散」を伴う場面では、肯定的な感情を意図的に作り出すことで、成果の精度を高めていくことができます。
 
一方、否定的な感情(怒り・悲しさ・さみしさなど)は、その人に集中力を与え、先のリスクを読み、抜けや漏れを探す際にふさわしい感情となります。否定的な感情には、注意を向ける範囲や知覚領域を狭めていく、物事の真偽を問い直すという効果があるからです。生産工程の改善、プロジェクトのリスク識別、内部監査といった「収束」を伴う場面では、否定的な感情を意図的に作り出すことでその効果を高めることができます。
 
いかがでしょうか。望ましい判断やふるまいを懸命に選択していくために、「望ましい感情」を選択していくことが「感情の利用」になることがわかります。そして、「感情の利用」のために、日常的に自分の感情のメーターを意識していくことが基本(重要な条件)となることが理解できるのではないでしょうか。
 
私たちの思考や行動は感情の影響を避けることはできません。私たちは、もっともっと、自分の感情のメーターを意識していく必要があります。そしてそれは、まさにいま、この瞬間から始められるのです。
 
次回は、「望ましくない強い感情」(怒りの感情)を遠ざけるためにどうすればよいかについてお話したいと思います。

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<ポイント>
セルフコンセプトのポイント(16)感情のメーターを装着することで、コミュニケーションが変わる
セルフコンセプトのポイント(17)感情の利用は、感情のメーターを日々モニタリングすることが基礎になる

本記事は、最上雄太著 『セルフコンセプト』(2012)の内容を当コラム向けに新たに加筆・修正を行っています。当記事および最上雄太著 『セルフコンセプト』(2012)の無断複写(コピー)は著作権での例外を除き禁じられています

 


 

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