『EQ──こころの知能指数』でEQ(Emotional Intelligence Quotient)という新たな概念を全世界に知らしめた心理学者ダニエル・ゴールマン氏は、同著の中で「人の感情はウィルスのように、人から人に伝染する」という説を発表しました。同氏は「ある人の感情が、ほかの人の状況に影響を及ぼすということは、良きにつけ、悪しきにつけきわめて自然なこと。われわれは社会的ウィルスのように、お互いの感情を交換し合うことを常に行っているが、これについてほとんど意識されていない」と述べています。

感情の伝染は、人間の脳が持つきわめて自然な機能であり、不随意に働くものです。それは、人が感情的な交流を行い、社会性を持ちながら「人が人らしく」あるために、生まれ持って備わった機能です。したがって、「共感する」「わかり合う」といった状態は、感情の伝染が効果的かつ良好に起こった結果だと言えるでしょう。

注目したいのは、感情の伝染という現象は、たとえ意図しなくても、言葉に出さなくても、そんなことが自分には起きないと信じていても、それを拒否しようとしても、本人の意思とは関係なく起きてしまうことです。私たちは普段、感情の伝染を意識してはいませんが、こうしたことは自分や他者の間で確実に起こっているのです。

感情は伝染する

感情はウィルスのように伝染する

 

仕事の現場でも感情の伝染は起こっています。

チームという集団の中では、感情の伝染があらゆる人の間で起こり、その場には全員の感情が入り交じった「感情のスープ」のようなものが作り出されます。そして、その「感情のスープ」に一番強い味付けを施しているのはマネージャーあるいはチームリーダーです。なぜなら、彼らはメンバーの関心を一手に集める存在であり、チームメンバーは彼らの表情・行動などから発信される感情を優先的に受け取ってしまうからです。

例えば、次のような話があります。

いつもイライラしている川崎部長。今日は朝から部の成績について本部長から注意を受けたので、いつにも増してご機嫌ナナメ。そのため、部内は緊張に包まれています。そんな雰囲気を感じ取ったのか、川崎部長は部下たちに対してこう怒鳴りつけました。「なんでお前たちは、楽しそうに仕事をしないんだ!」その言葉を聞き、部下たちは一様に下を向いてしまいました。そして部下たちはこのように思ったのです。

「あなたがそうさせているのです」

チームメンバーのモチベーションを左右する最大の要因は、マネージャーあるいはチームリーダー自身の感情です。例えば、マネージャーが心配や不安、動揺などネガティブな感情を抱えていると、どんなに隠そうとしても、それは日々のちょっとしたふるまいに表れてしまい、そこに含まれる感情とともにモチベーションの低さも伝染してしまいます。

 

次回は、マネージャーあるいはチームリーダーは、自らの感情の伝染のネガティブな影響を避けるためにまず自分の感情にフォーカスすることから始めよう!というお話をしたいと思います。

 

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<ポイント>
セルフコンセプトのポイント(14)日常に起きる「感情の伝染」の影響を本気で意識しよう
セルフコンセプトのポイント(15)チームメンバーの感情は、リーダーの感情が感染源になると心得よう

本記事は、最上雄太著 『セルフコンセプト』(2012)の内容を当コラム向けに新たに加筆・修正を行っています。当記事および最上雄太著 『セルフコンセプト』(2012)の無断複写(コピー)は著作権での例外を除き禁じられています

 


 

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