
以上のことから、リーダーシップとは、自己認識を源泉とした信頼関係構築プロセスの成果物であるという結論が引き出される。
かつての特性論アプローチは、リーダーのもつ生来の特性に注目していた。しかし、生来リーダーが持つ特性の役割は、小さく、効果があることはわかるが、それだけで有効性を判断することができないという欠点を抱えていた。
EQリーダーシップ(感情コンピテンス)アプローチは、高業績を残す人材の特性(コンピテンス)という理論背景を持っており、特性論アプローチの発展型と位置づけることができる。そして、感情コンピテンスは、学習により開発と能力向上が可能な知能である。生来というよりはむしろ、経験と学習により醸成される能力という点で特性論のアプローチとは大別される。
また、モチベーションと共感力という2つの軸を包含してはいるものの、行動アプローチとはアプローチのしかたは異なっている。しかし状況に適合させるといいう点では、コンティンジェンシーアプローチに近い視点を持っている。
EQリーダーシップ(感情コンピテンス)アプローチは、状況を感じ取る能力について根拠を提示するだけでなく、正確な判断や思考を行うための感情の調整という視点があり、したがって適切なリーダー行動をおこなうための方法論を明らかにしている。このようにみてくると過去のアプローチとくらべ優位性をもっている。
しかしながら、リーダーシップの有効性の指標となるリーダーとフォロアーの相互信頼感の醸成度合いを客観的に測定することができないとか、コンピテンスの発揮度合いを正確に把握することができない、などといった客観的な数値根拠を提示できないという点において、問題点をかかえている。
本章における結論は、「リーダーを養うためには自己認識を促進させるべし」という筆者の金科玉条を紡ぎ出すことになった。これは、自己認識に効果的に作用するようなプログラムを開発することが、結果的にリーダーを創り出す源泉となるという「理論的根拠」を得たことになる。いま現在、筆者は、リーダーおよびマネジャーを対象とした研修プログラムを開発し提供している。それらのポジティブな実践的フィードバックによって、本章はさらに信憑性を高めている。近い将来、本章で主張しているEQリーダーシップ(感情コンピテンス)アプローチの有効性について論じることになるだろう。