・リーダーとして尊敬される人になりたい。

・リーダーとしてメンバーから信頼を得たい。

リーダーであれば、少なからず、誰もがそう願っているのではないでしょうか。

 

そうであるとしたら

リーダーとして「見落としてはいけないこと」は何か?

今回は、リーダーが陥りやすい「盲点」の話です。

 

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ある日、某IT系企業の新任リーダーSさんが私のところに相談に来ました。
どうやら、部下とのコミュニケーションについて悩みがあるようです。


Aさんの相談の経緯(悩みの中心)は、以下のようなことでした。

  • Aさんは、最近昇格をして数名の部下を持つ管理職になった。
  • Aさんは、部下から信頼される上司になろうと、接し方や上司としての姿勢などを勉強したり、さまざま工夫をしようとしている。
  • Aさんは、普段から部下メンバーのアドバイスしたり相談に乗ったり、はげましを行うようにしている。

⇒⇒そんな日常的な努力にもかかわらず、Aさんの実感としては、部下のメンバーから思うように信頼を得られていないという悩み。

 


Aさんは、私に聞きました。

「自分より下の人間に対して、今後どう接していったらよいでしょうかね?」


私はAさんに伝えました

「Aさんは、下の皆さんに対してとても一生懸命ですね。懸命な努力をしているように私には見えますし、それは部下の皆さんにも伝わっていると思いますよ。」


そして、私は続けました

「では、上に対してはいかがですか?」


Aさんは、私の質問が意外だったようで、びっくりした表情を見せました。

Aさん「上って?」

私「Aさんの上司です」

私「Aさんは、Aさんの上司に対して、『仕事の面で言うべきこと』をきちんと言っていますか?」


Aさんは、なぜいまそんなことを聞くのか?と思った様子でしたが、このように答えました。

Aさん「いまは、下の面倒を見るのに精いっぱいで、上に対しては指示を聞いたり、必要な報告をしたりするようなことしか、正直言えばできてないと思います。」


私は、Aさんに伝えました

「上への影響力がもしかしたら、Aさんの課題じゃないでしょうか?」

Aさん「上への影響力?」

私「そうです、正式には、『上方影響力』っていいます。『上方影響力』が不足していると、Aさんが一生懸命部下の皆さんに行っているコミュニケーションがむしろマイナスに働く可能性があるんですよ」

 


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リーダーシップ行動を心理学者の観点から研究調査したドナルド・ペルツは、 『上方影響力』という理論を発見し、提唱しました。


『上方影響力』とは、

自分の上司に対して、「ものを言う程度」のことです。


・チームや組織のことを考えて、必要なことを上申・進言する人は、 『上方影響力が高い人』です。

・逆に、上司にいいなりで、必要なことでも上司に対して上申・進言することをはばかる人は、『上方影響力の低い人』となります。

そして以下が、 『上方影響力』に関してペルツの見いだした説です。


(1) 『上方影響力』が高い場合には

→「配慮的な行動の効果性」はプラスに働く。


(2) 『上方影響力』が低い場合には

→「部下に対して配慮的な行動の効果性」はマイナスに働く。

 

つまり・・

「部下に対して配慮的な行動の効果性」は、『上方影響力』によって左右するのです。

部下に対しての配慮的な行動とは 、まさにAさんが日常的に行っていることです。

 

例えば以下です

  • 部下への声かけ
  • 適切なアドバイス
  • コーチングによるサポート  など


ペルツの主張する 『上方影響力』の説に従えば

Aさんが思うように部下から信頼を獲得できていない理由がわかってきます。


つまり

Aさんが思うように部下から信頼を獲得できていない理由は、

Aさんの部下へのコミュニケーションの方法の優劣にあるのではなく

Aさん自身の「上司への向き合い方」にあったのです。


ここでいう
「上司への向き合い方」とは、Aさんの『上方影響力』にほかなりません。


つまり

『上方影響力が低い』と思われるAさんは

(2) 『上方影響力』が低い場合には
→「部下に対して配慮的な行動の効果性」はマイナスに働く。


上記(2)のような状態になっていたと考えられるのです。

 


言うまでもないことですが・・

ペルツの『上方影響力』の説は、部下に対しての配慮的な行動が効果がない、だから、やらなくてよいということを示唆するものではありません。

部下に対しての配慮的な行動を行うだけでは、思うように信頼を得ることはできないという「人の機微」を示しているのです。

 


ところで

諌言(カンゲン)という言葉をご存知でしょうか?

 

諌言(カンゲン)とは、目上の人の非をいさめること。また、その言葉のことです(広辞苑第5版)

諌言(カンゲン)は、上申・進言と意味はほとんど同じです。


上司といっても、その考えや行動について100%正解を示せるわけではありません。

部下として上司の指示に耳を傾けることは大事なことですが、組織やチームの方針、本来の目的に照して、上司の発言や意向にズレがあるようであれば、その発言の真意を尋ねたり、建設的な意味での意見をすることは、組織やチームを守るためにとても必要なことです。

 

諌言(カンゲン)のポイントは

組織やチームを守るためにという目的意識を持って、必要なことを上司に意見したり伝えることです。


決して、単に、上司にたてついたり、反抗的な態度をとることではありません。

 

 

また、諌言(カンゲン)について、こんな話しもあります。


松下幸之助は、著書『指導者の条件』の中で、指導者(リーダー・上司)に必要な要件102日箇条の一つとして『諌言(カンゲン)をきく』を挙げています。


上司は、諌言を集めることを行う必要がある、そして、みながそれを出しやすいような雰囲気をつくらなければならない(p. 43).


と松下は言っています。


つまり・・

部下として、諌言すること(上方影響力を発揮すること)も大事。

上司として、諌言をきくこと(上方影響力を発揮させること)も大事。


なのです。

 


ペルツの『上方影響力』は何を教えてくれるでしょうか。

 

その一つは、

『部下は上の人間(上司・リーダー)の組織やチームへの影響力をよく見ている・感じ取っている』

ということです。


このことは、自分が部下の立場であれば、実感としてよくわかることのではないでしょうか?

 

しかし

いざ上司の立場になると見えなくなる。


これこそが、リーダーが陥りやすいなの「盲点」です。