朝日新聞2010年4/10 逆風満帆 より

片岡鶴太郎の話

片岡鶴太郎といえば

いまは、コメディアンというより、俳優。

書や絵などもたしなむ芸術家としての顔も持つ

精悍な、渋みのある存在感の印象があるが

デビューは、マッチとかのまねをする物まねタレントだった。

27~32歳までの間は、人気の絶頂期で、最高週12本のレギュラーをかかえていたという。

不摂生のために、ぽっちゃりと脂ぎったキャラクターが持ち味になっていた。

その時の自分を回想し、

「自分の芸は物まねが原点だから、常に誰かに扮して笑いを表現している。つまり、自分の素のキャラクターは非力だったんです」

と、『ひょうきん族』の頃の絶頂の間にいながらも、

自らの現実の間に苦しみ、もがいていたという。

このままでは前に進むことができない、なんとかしなきゃと。

その逆境を逆手に取り、順応する道がひとつだけ開けていた。

それが俳優への転進だった。

「誰かに扮していないと自己表現できない弱みは、逆に役者に適した資質だと気づいたんです」


自分の持ち味って何だろう?

つくづく考えさせられた。

弱みと思っていたことが、実は自分の変えがたい強みであったということ。

強みとは、長年培ってきた、容易に変えることのできない癖のようなもの。

それは、たいてい、自分はこうありたい、という願望に近いものではなく

自分ではなかなか気づかないが、他者には認めてもらえる、他者に価値が感じられるもの。

他者との関係性の中で、顕在化する、かけがえのない個性。