
さて、3では、リーダーシップにおけるプロセスの存在を確認した。ここでは、本章を総括し、感情コンピテンスアプローチによるモデルを提案しつつ、リーダーシップ源泉の存在を明らかにしたい。
EQリーダーシップ(感情コンピテンス)アプローチモデルによる特徴は、先ず第1点として、リーダーシップには自己認識という源泉が存在することを明示している点にある。これは、リーダーシップとはアウトプットつまりリーダー行動を行うことだけに注目するのではなく、発揮プロセスの源流に存在する自己認識という個人のコンピテンスつまり個人の特性に視線を戻す必要性を示している。(図表 5と図表 6)
第2点として、このモデルは、自己認識の醸成、相互信頼関係の醸成を経てアウトプットとして、リーダーシップの発揮が導かれることを示している。つまり、リーダー行動について、その表面的な「スタイル」が求められるのではなく、表出化するまでのプロセスを含めた「質」が求められるのである。
一連のプロセスにおいて、質を高める最大のファクターは、リーダーとフォロアーの相互信頼関係である。相互信頼関係を高めることにより、リーダーシップの有効性に貢献するのである。
第3点は、信頼関係は数値的に示すことのむずかしい尺度であるが、感情コンピテンス理論に立脚すれば、自己認識というリーダーシップの源泉を基点としてモチベーションと共感力というコンピテンスが発揮されることにより結果的に信頼関係が醸成されることが明らかとなっている。
第4点は、感情コンピテンス理論に立脚すれば、各コンピテンスは開発と向上が可能になることである。つまり、このモデルにおいて明示されたリーダーシップの源泉たる自己認識の鍛錬と学習により、リーダーシップの有効性の向上と質的変化を導くことができる。
もちろん、モチベーションと共感力というコンピテンスも同様であるが、肝要な点は、モチベーションと共感力の向上には自己認識の向上が不可欠であるという点である。

