
図表 3は、25の感情コンピテンスが発揮された結果として具体的にアクションとして行われると思われるリーダー行動を推量したものである。縦軸がEQの5つの因子と25の感情コンピテンス、横軸がリーダー行動の代表的指標として扱われるLBDQ-XⅡのフルスケール項目*13である。
各感情コンピテンスが発揮されることにより、具体的に行動に表れると推測されるリーダー行動項目については“○(マル)”印をつけた。この評価は、筆者のEQプロファイラーとして実務において経験した知見などを生かしておこなっている。
さて、図表 3によりわかることの第1点として、社会的スキル因子に横軸の12元すべてのリーダー行動が網羅されていることである。ここからわかることは、リーダーシップ論の中で、これまで「リーダーシップ行動」といわれていた現象は、すなわち感情コンピテンス理論でいう「社会的スキル」を発揮した結果の発現行動であるということである。換言すれば、感情コンピテンス理論における社会的スキルの発揮は、リーダーシップの有効性の発揮であると仮定できそうである。
第2点としては、共感性や社会的スキルといった社会的コンピテンスと比較すると、自己認識、自己統制、モチベーションという個人的コンピテンスには、そこから直接的に推測されるリーダー行動は少ない。
ここからわかることは、まず第1に「いわゆるリーダー行動は目に見える観察可能な行動を示している」というということを確認できることであり、加えてLBDQ-XⅡの12次元が示すリーダーシップ行動とは、一連のプロセスの中で最終的に表出化された状況を説明するものであり、同時に客観的に観察することのできないリーダーシッププロセスがその前段階において存在していることを示しているのである。
図表3 感情コンピテンスとリーダー行動(LBDQ-XⅡフルスケール)の比較(PDF 19KB)
そして、第3に、個人的コンピテンスを中心としたそれら客観的に観察することのできないプロセスの存在は、感情コンピテンス理論において信頼関係を醸成させる重要なプロセスであり、リーダーシップの有効性を発揮させるためには必要な鍵となる。
第4点は、行動論のアプローチにおける「構造づくり」と「配慮」の2軸は、感情コンピテンス理論の観点からみると極端には集中をしていない。感情コンピテンス理論に立脚し、前述のとおり社会的スキルの発揮によってリーダーシップが発揮されるという仮説によれば、「リーダーシップを行動で大別すること」、そして「行動でリーダーシップの有効性を測定すること」の意義は改めて疑問視といわざるを得ない。
*13 金井壽宏(2005)『リーダーシップ入門』日本経済新聞社 pp.240-241.